フコイダンの制癌剤副作用抑制効果に関する米国特許を取得!
国立大学法人鳥取大学(学長:豊島良太)および水産加工食品メーカーの株式会社海産物のきむら や(代表取締役社長:木村隆之、本社:鳥取県境港市)では、医学部池口正英教授グループと海産物の きむらやの共同研究の成果をもとにした特許出願(制癌剤副作用抑制剤、Agent for preventing adverse side effects of carcinostatic agent )が、このたび米国特許査定(特許番号 US 8,974,796B2)の通知を受け ました。この結果は、大腸癌患者を対象とした臨床試験でフコイダンが制癌剤の副作用を軽減させる効果があることを示しています。なお、本研究内容は特許出願後にさらにデータ取得解析を続け、 特許出願の 1 年 2 カ月後に学術誌 Oncology Letters に掲載されております。本文章中の数値は特許出 願時のデータを記載し、カッコ内に論文掲載時のデータを併記しております。
【研究概要】
ヒト培養細胞を用いた基礎研究で、これまでにフコイダンに「制癌剤により正常細胞が死滅することを防ぐ効果があることが確認されています。そこで実際に癌患者に対して、フコイダンが 5-フルオロウラシル を含む制癌剤の副作用を抑える効果があるかどうか、臨床試験によって検証を行いました。 大腸癌患者 20 人に対して、制癌剤による治療を行いました。この内、フコイダン投与対象者を 9 人(出 願時に解析可能な患者数)(論文掲載時は 10 人)、投与非対象者を 8 人(出願時に解析可能な患者数) (論文掲載時は 10 人)とし、投与対象者には制癌剤治療を開始した日から毎日、6 か月間フコイダンの投 与を行いました。 その結果、フコイダン投与対象者は、制癌剤処方のサイクルの平均値が 13.8 コース(出願時値)(論文 掲載時値は 19.9 サイクル)であったのに対し、投与非対象者は 7.9 コース(出願時値)(論文掲載時値は 10.8 サイクル)でした。投与対象者の方が、明らかに制癌剤の処方コースが増加しました。さらに、制癌剤 による治療期間中に見られた副作用で、Grade 2 の倦怠感(疲労感)を示したフコイダン投与非対象者は 9 人中 5 人(出願時)(論文掲載時は 10 人中 6 人)であったのに対し、フコイダン投与対象者については、 10 人中わずか 0 人(出願時)(論文掲載時は 10 人中 1 人)でした。統計上、明らかにフコイダン投与対象 者の倦怠感を軽減することが確認されました。 以上の検証から、フコイダンには、「制癌剤治療を行っている大腸癌患者の倦怠感を抑える」効果があ るとともに、「制癌剤を処方するコース数を増やすことができる」ことが確認されました。
【語句説明】
◆フコイダン フコイダンは海藻の中でも、もずく、昆布、ワカメ、ヒジキ等の褐藻類に多く含まれている成分である。
◆5-フルオロウラシルを含む制癌剤 5-フルオロウラシルを含む制癌剤を処方する方法例として FOLFOX(フォルフォックス)と FOLFIRI(フォ ルフィリ)がある。FOLFOX はオキサリプラチンと 5-フルオロウラシルの 2 種類の制癌剤と、ロイコボリンと いう 5-フルオロウラシルの働きを高める薬剤を同時に投与する。FOLFIRI はイリノテカン、5‐フルオロウラ シルの 2 種類の制癌剤と、ロイコボリンという 5-フルオロウラシルの働きを高める薬剤を同時に投与する。
◆制癌剤処方のサイクル(コースまたはクール) FOLFOX または FOLFIRI の処方に従い、点滴静脈注射にて制癌剤と薬剤を投与し、2 週間、経過を観 察する。これを 1 サイクルとする。激しい、もしくは継続的な毒性(副作用)が現れた場合は、薬剤濃度を 下げるか、次のサイクルの開始を中断する。
◆Grade 2 有害事象の程度を表す。有害事象とは、薬の使用者に生じた好ましくない事象のこと。症状の程度は、 アメリカ国立癌研究所による「有害事象共通用語規準」として統一されており、Grade 0 の「正常」から「有 害事象による死亡」の Grade 5 まで、重症度に応じて 6 段階に分かれている。Grade 2 は、「中程度の有害 事象。最低限の治療、局所的治療 または非侵襲的治療(肉体の通常の状況を乱さない程度の治療)を要する」と定義されている。