なかなか解明されなかった化学構造
フコイダンとは、国際糖質命名規約で決められた名称であり、フコースと硫酸基を主成分とし、そのほかにガラクトース、マンノース、キシロース、ウロン酸などを含むことがある。
フコイダンは海藻の中でも、もずく、昆布、ワカメ、ヒジキ等の褐藻類に多く含まれており、一部の棘皮動物にも含まれる成分である。約100年前にスウェーデン・ウプサラ大学のキリン教授によって発見された。
しかし、褐藻類の種類、部位、採取時期、個体の成長度などによって分子構造が異なっていたため、以後、数十年にわたり、その化学構造が解明されることはなかった。
フコイダンの化学構造について報告が増えたのは、1960年代に入ってからである。大部分のフコイダンは構造が解明されていないが、もずくフコイダンの化学構造については、1996年に琉球大学農学部のグループが発表したのをはじめとして、いくつかの報告がある。
これらの報告によると、もずくフコイダンは4つのフコース、1つのグルクロン酸と2つの硫酸基からなる構造をひとつの単位(分子量約1,000、5つの糖からなる)として、繰り返し構造をしていると考えられている。1)
なお海産物のきむらやは現在、さらに詳細に構造を解明するため、鳥取大学医学部との共同研究によって、もずくフコイダンの部分的な三次元構造を研究中である。
低分子フコイダンをフコイダンと定義できるのか?
一般的に糖が2~9個結合したものをオリゴ糖、10個以上結合したものを多糖類、さらに高分子とは、分子量約10,000以上の大きな分子をいう。よって、高分子のもずくフコイダンは分子量約10,000以上の多糖類で、低分子のもずくフコイダンは分子量約10,000未満の多糖類であるといえる。
フコイダンは、褐藻類から抽出する過程で低分子化される。そこで分子量が約2,000以下になると、糖の数が10個未満となり、もはや多糖類のフコイダンの性質をもっていないと考えられる。さらに分子量約1,000以下になると、繰り返し単位の構造が保てなくなるため、フコイダンではないと考えられるのである。
高分子フコイダンこそが優れた機能性を発揮する
フコイダンを語るうえで忘れてはならないのは、フコイダンは食物繊維の一種であるということである。
食物繊維とは、植物などの食物に含まれる体内で消化されない成分であり、多くは多糖である。食物繊維の一種であるフコイダンは、体内で栄養素として消化吸収されることはない。なぜならフコイダンは、人体を構成する成分ではないと考えられているからだ。
たとえば、同じ多糖であってもコラーゲンや単糖であるグルコサミンなどは人体を構成する成分であり、栄養素として吸収される。
フコイダンを摂取することによって、優れた機能性を発揮されるメカニズムとしては以下のような仮説が考えられ、海産物のきむらや開発研究室をはじめ、さまざまな研究機関で研究が進められている。
①腸管に例外的にフコイダンを吸収できるメカニズムがあり、これにより吸収されたフコイダンが優れた力を発揮する。
あるいは
②腸内の細菌がフコイダンを利用し、この細菌を介して腸管の免疫が活性化され、優れた力を発揮する。
そもそもフコイダンは高分子の状態でもずくに含まれている。ゆえに、自然に近い状態の高分子のフコイダンこそが、本来の力を発揮するのに有効であると考えられる。
【出典】 1)山田信夫 海藻フコイダンの科学 成山堂(2006)
動画資料
分かりやすいフコイダン研究のご紹介「海産物のきむらや~もずくの神秘に挑む~」は、
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海産物のきむらや開発研究室と鳥取大学、島根大学などとの共同で実施した研究において、抗がん効果、抗がん剤副作用抑制効果をはじめ、高分子もずくフコイダンがもつ生理活性作用についてわかりやすく紹介。