2010年7月8日、海産物のきむらやを出願人とする、発明の名称『アセトアルデヒド・エタノール低減剤』の特許出願が公開された1)。主な内容は、「成人男女を対象に、フコイダンを飲酒前に摂取することによって、血中および呼気中のアセトアルデヒド、エタノールの濃度低減に有用であることを検証した」というものである。以下に、その詳細を説明する。
フコイダン摂取後のアルコール分解促進を検証
飲酒後または飲酒中に気分が悪くなり、頭痛や吐気などの症状を示す原因物質のひとつが、エタノールの分解物であるアセトアルデヒドであると考えられている。このような飲酒に関連した物質が、事前にフコイダンを摂取することでどのように変化するか、試験を行った。
被験者10名(年齢:20~60歳代)について、試験開始時に空腹となるような条件を設定した。具体的な食事条件は、被験者に試験当日昼食から同一の食事内容(アルコールは含まない)を摂食させ、昼食後6時間経過したところで試験を開始した。
まず、試験開始前30分に各自フコイダンを30ml摂取させた。そして30分後に試験を開始し、各自 2合の日本酒(アルコール度数15度)を10分間で摂取させた。飲酒開始直前(0時間)及び飲酒開始から2、4、6、14時間ごとに呼気を1Lずつ及び血液を20mlずつ採取した。なお、試験開始2時間後の呼気及び血液採取後に、被験者に同一の食事内容(アルコールは含まない)を摂食させた。コントロールとして、同じ被験者に後日、試験開始前にフコイダンを摂取しない条件で上記と同様のアルコール負荷試験を実施した。呼気中のアセトアルデヒド、エタノール濃度はガスクロマトグラフィー(GC)①で濃度を測定した。血清中のアセトアルデヒドは酵素法②にて測定し、エタノール濃度は従来法で検査会社に分析依頼をした。
飲酒前摂取が有効であると立証
その結果フコイダンを摂取することによってアセトアルデヒド、エタノールともに濃度が各測定時間においてもAUC(積算量)においても低減されていることが確認できた。特に顕著だったのは、飲酒4時間後の呼気中アセトアルデヒド濃度と飲酒2時間後の呼気中エタノール濃度であり、フコイダンの有無によって有意差③が見られた。また、飲酒6時間後の血清④中アセトアルデヒド濃度及び飲酒2時間後の血清中エタノール濃度においてもフコイダンの有無によって有意差が見られた(図1、図2)。
これらの結果から、フコイダンの飲酒前摂取が、飲酒後の呼気中および血清中のアセトアルデヒド濃度、エタノール濃度低減に非常に有効であることがわかった。
【出典】 1)アセトアルデヒド・エタノール低減剤 特許公開公報,特開2010-150241(2009)
- 用語解説
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①ガスクロマトグラフィー(GC)/気化しやすい化合物に用いられる機器分析の手法。測定感度は液体クロマトグラフィー(LC)よりも高い。
②酵素法/分解酵素を用いた分析方法で、アセトアルデヒドの分解酵素を用いた血液中の定量分析方法。アセトアルデヒド脱水素酵素による分解物を吸光度によって測定する手法。
③有意差/確率論・統計学の用語。確率的に偶然とは考えにくく、客観的に見て意味があると考えられる差のこと。
④血清/血液が凝固して細胞成分(赤血球や白血球)と凝固成分とを除いた上澄みのこと。淡黄色の液体成分で抗体や様々な栄養素、老廃物を含む。この血清からコレステロール値やGOTなどの血液生化学検査を行うことができる。凝固成分は血餅と呼ばれる。
動画資料
分かりやすいフコイダン研究のご紹介「海産物のきむらや~もずくの神秘に挑む~」は、
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海産物のきむらや開発研究室と鳥取大学、島根大学などとの共同で実施した研究において、抗がん効果、抗がん剤副作用抑制効果をはじめ、高分子もずくフコイダンがもつ生理活性作用についてわかりやすく紹介。