自社製品の品質管理向上のために開発研究室を設置
「お客様においしくて、安心、安全な食品をお届けしたい」
創業以来もずく製品を中心に製造・販売してきた海産物のきむらやの企業理念である。そして、当社研究開発の原点もそこにある。
食品の品質、衛生管理を徹底すべく、社内に開発研究室を設置したのが1987年。それから科学的視点を取り入れての研究が始まった。
1994年からは島根大学農学部(現・生物資源科学部)と共同の研究を開始。同大学の研究室に社員を派遣し、もずくの品質保持と発酵制御などをテーマに研究を重ねてきた。
食の信頼をゆるがす事件がきっかけに
1996年、児童や高齢者を中心に腸管出血性大腸菌O-157の集団感染、いわゆる「O-157事件」が発生。日本各地で死者を含む多数の被害をもたらした。
この事態を深刻に受け止めた当社は、自社製品のO-157に対する安全性を調査するため、島根大学との共同の研究において、味付もずくにO-157を試験的に混入し、その様子を観察。すると驚いたことに、味付もずくの中でO-157が死滅していくことがわかった。
しかもO-157が死滅する際、感染者の体内で産生し、重篤な症状をもたらすとされるベロ毒素(出血性の下痢、溶血性尿毒症症候群、急性脳症などを引き起こす病原因子)も産生しないことが判明。検証を進めた結果、もずくのヌメリにこそ抗菌作用をもつ成分が含まれていることを確認した。
フコイダンの抗がん剤の副作用抑制効果を新たに発見
その後、当社開発研究室と島根大学生物資源科学部の研究チームは、もずくのヌメリに含まれる抗菌性を示した有用成分が、「フコイダン」と同一成分であることを突き止めた。
フコイダンは、1913年スウェーデン・ウプサラ大学のキリン教授によって、初めて存在が確認された成分。以後、各国の研究者によって研究が進められ、1980年代頃からは、フコイダンのもつ抗腫瘍(抗がん)効果に注目が集まりはじめていた。
当社は島根大学との共同の研究により、実験室で抽出したもずくフコイダンについても、がん細胞に対する増殖抑制効果を確認。さらにその過程で、抗がん剤の副作用抑制効果も発見した。
鳥取大学医学部との共同研究で生理活性作用の解明へ
2004年には文部科学省実施の研究事業「都市エリア産学官連携促進事業(鳥取県米子市・境港エリア)」の申請に伴った事業への参画をきっかけに、鳥取大学医学部との交流が始まった。
この交流により、培養細胞を用いた基礎的なレベルの研究から、動物実験やヒト臨床試験など、より実践的な検証を行なうことが可能となり、当社のもずくフコイダンの生理活性メカニズムを解明する道がさらに開けた。
また、2006~2008年度に行われた前出の「都市エリア産学官連携促進事業」では、当社のもずくフコイダンを研究材料として提供。「染色体工学技術等による生活習慣病予防食品評価システムの構築と食品等の開発」を研究課題に、鳥取大学医学部、同大農学部、同大工学部、鳥取県産業技術センターと共同で研究を実施した。3年におよぶ研究の結果、フコイダンの痛風の予防につながる効果、血栓の防止につながる効果、軟骨の再生促進効果、抗がん効果などが確認され、高分子もずくフコイダンの今後の有用性が大いに期待できることが明らかになった。
現在も当社は、もずくフコイダンを対象に鳥取大学医学部、同大学農学部、同大学工学部などと共同研究を継続して実施。数々の研究成果をあげており、世界中の研究者からも注目を集めている。
本エビデンスサイトでは、これまでに当社が各研究機関と行なってきた、動物実験やヒト臨床試験の研究成果を中心にご紹介する。
動画資料
分かりやすいフコイダン研究のご紹介「海産物のきむらや~もずくの神秘に挑む~」は、
こちらからどうぞ。
海産物のきむらや開発研究室と鳥取大学、島根大学などとの共同で実施した研究において、抗がん効果、抗がん剤副作用抑制効果をはじめ、高分子もずくフコイダンがもつ生理活性作用についてわかりやすく紹介。